国内融和、政策実現へ 国と地方議会の構成が焦点
今回の総選挙を受け、ミャンマーの政治は、選挙後の制度運用と政策運営の具体化を見通す局面に移りつつある。とりわけ、連邦議会の招集時期と、州·管区政府の形成プロセスは、今後の政治運営を理解するうえで重要な要素となる。
ミャンマーの連邦議会(Hluttaw)は二院制で構成され、人民代表院(下院)と民族代表院(上院)から成る。憲法の規定により、上下両院とも定数の25%は国軍が指名する軍人議員枠で占められ、残る75%が選挙によって選出される。このため、議席構成を把握する際には、選挙による議席と、制度上あらかじめ割り当てられた軍人枠を区別して捉える必要がある。
連邦選挙管理委員会(Union Election Commission)の公告に基づき、当選が確定している国政(上下院)議席を見ると、党派別の構図は明確である。選挙で争われた議席のうち、Union Solidarity and Development Party(連邦団結発展党、USDP)は、下院231議席、上院108議席、合計339議席を獲得し、選挙議席ベースで最大勢力となっている。
これに対し、民族系·地域政党は、シャン州、モン州、ラカイン州、チン州など各州を基盤に、1党あたり数議席から十数議席規模で分散して当選者を出している。全国規模で多数派を形成するには至らないものの、州·地域レベルでは一定の影響力を持つ構成となっている。かつて政権を担ったNational League for Democracy(国民民主連盟、NLD)は、政党登録抹消等の経緯により今回の選挙には参加しておらず、国政レベルでの確定議席を持たない。
選挙で選出された議席に、軍人枠(下院110議席、上院56議席)を加えると、連邦議会全体としては、USDPを軸とする勢力が安定した多数構成を形成している。制度上は、大統領選出、内閣編成、立法日程の確定といった国政運営の基本的な手続きが、比較的見通しをもって進められる前提が整ったと整理できる。
議会招集と選挙後の日程
国営メディアなどの報道によれば、連邦議会(上下院)は2026年3月第3週ごろに招集される見通しとされている。選挙結果の最終的な整理と公告を経たうえで、上下院が同時期に始動し、議長団の選出や議会運営体制の整備が行われるとみられる。連邦議会の招集後、憲法の規定に基づき、大統領選出が行われ、その後に連邦政府(内閣)の編成が進む。各省庁の担当大臣の任命を経て、国政レベルでの新体制が正式に発足する流れとなる。並行して、州·地域議会も順次招集される。州·地域政府の行政トップである首相(Chief Minister)は、制度上、州・地域議会の議員の中から選ばれ、連邦大統領によって任命される仕組みである。このため、首相人事は、州・地域議会における議席構成と多数派の形成状況を前提に進められる。
今回の選挙結果を見ると、州·地域議会では、USDPが優位を占める地域がある一方、民族系政党や地域政党が一定の議席を確保している州·管区も少なくない。このため、首相人事や地方政策の方向性は、単純な一党主導ではなく、議会構成を踏まえた調整を経て決定されると見込まれる。
国政と地方が併存する構造
国政では安定した多数構成が成立する一方、地方では多様な政治主体が併存するという二層構造が、今回の選挙後体制の大きな特徴である。この点は、過去のNLD政権期との比較によって、より明確になる。当時は、国政のみならず州·地域レベルでもNLDが多数を占め、首相ポストを含めて単一政党による統治が行われていた。
現在の体制は、そのような一元的構造とは異なり、地方レベルでは調整を前提とした政策形成が想定される。州·地域政府の構成と、その後の政策運営の進み方は、今後の政治の安定性と実務の方向性を読み解くうえで、重要な観察点となる。
今回の総選挙は、ミャンマー政治を「選挙結果の評価」から、「確定した議席構成と日程を前提に、政策運営がどのように具体化していくか」を見通す段階へと移行させた。今後は、2026年3月第3週とされる連邦議会招集を起点として、連邦議会と州·地域政府という異なる統治レベルにおいて、制度の枠内でどの分野から政策が組み立てられ、どのような手順で運用されていくのかが、注目される。